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人生の舵は自分で握ろう。|武蔵野大学中学校・高等学校校長 日野田直彦さん【特別インタビュー】

更新日 2023.03.30
人生の舵は自分で握ろう。|武蔵野大学中学校・高等学校校長 日野田直彦さん【特別インタビュー】
偏差値50の公立出身の“ フツー”の高校生が世界の大学へ飛び出す。名もなき公立高校の快進撃が教育界で注目を集めています。仕掛けたのは校長を務める日野田直彦さん。もともとは教育業界も縁もゆかりもない「部外者」でしたが、日野田さんが2014年に赴任してから、同校は少しずつ変わりました。3年後にはメルボルン大学やシドニー大学などの世界の上位大学へと羽ばたくようになったのです。「最初はフツーの子、いや、日本の受験システムだと『できない』子もいる」と微笑む日野田さん。日野田マジックにかかれば高校3年間で生徒たちは激変する。一体生徒たちにどんな「マジック」をかけたのでしょうか。2018年から新たな高校でのチャレンジと改革をはじめた日野田さんにその秘訣を聞きました。

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失敗した人を積極的に褒める

 海外の大学に行け、とか言ったことはありませんし、日本の大学を否定したいわけではありません。ただ、今の日本の受験システムにちょっと違和感を覚えたんです。大学受験が目的になってしまっています。「何をしたい」や「どうなりたい」という目的から考えて大学を選ぶのではなく、ただ偏差値ランキングの上を目指すだけのお勉強になってしまっている。以前、進学塾の光景を見て、愕然としたことがあります。システマチックに学習するところは日本の良いところかもしれません。ただ一方で、これじゃあハイスペックロボットの工場です。でもそれだとこれから先をサバイブするのはなかなか難しいぞ…。そう思いました。

これから先を見据えた時に、日本の社会システムが「焼け野原」になっていくことは見えています。2050年には日本のGDP(国内総生産)はインドネシアの半分になってナイジェリアと同じになるといわれています。今ある仕事や会社が50年どころか10年後さえあるかわかりません。ならば行動あるのみで す。必要なのは「何をしてもOK。失敗し ても気のせい」という気持ちです。だから僕は失敗した人を積極的に褒めるようにしています。早いうちに転ぶ経験をたくさんして、いかにタフで自立心を培うか、だと思います。

ダメだったら撤退すればいい

 教え子たちは最初から「海外の大学に進みたい」という目標があったわけではありません。それどころか目標がなかったり、何をしたいかわからないという思春期特有の悩みを抱えている子も多くいました。だったらとにかく行動してみることが肝心です。スタンフォード大学にはこんな教えがあります。「1時間考え抜いて1つの答えを出すより、30秒で一つ答え出して、120回転させて、フィードバックをもらったほうがいい」。自分とは何者か、という問いに向き合い続けるんです。大学生活では4年間もその時間があるんですから、とにか くやりたいと思ったことに全部手を出してみるべきでしょう。ダメだったら勇気をもって撤退したり、やり方を変えればいいと思います。

会社を作ってみるのだって選択肢のひとつ

 教え子たちは放課後や休日にも、自分で好きなように学び始めています。中には会社を作った生徒もいたくらいです。教え子たちには「学校以外のコミュニティに顔を出してごらん」とアドバイスしました。生徒たちが自分の名前とSNSのアカウントを印刷した名刺を持って、大人たちに会いに行く。そんな光景が偏差値50の公立高校であったんですから驚きです。
 彼らは勉強ができたわけではありません。むしろ日本の「お受験」だけならもっといい点数を出せる生徒、学校はたくさんあります。なぜ彼らが世界に打って出られるか、彼らに共通しているのは“Who are you?”を自問し、行動しながらその答えを探してきたことです。

自分を磨ける環境に身を置いてみる

 日本の高校生活では教わらないことがたくさんあります。例えば宗教や政治、性の話。家族や学校で意見をぶつけたことがない生徒が多いと思います。ですが、特に国際色が豊かな場所ではそうはいきません。「あなたはどう思うの?」という質問とともにセンシティブな話題に突っ込まれます。「日本人は無宗教です」なんて答えたら外国人から総ツッコミが飛んできますからね。そういった場所では受験勉強の環境とはまったく違う知識や考え方が必要です。常に自分とは何か、を問われ続ける場所になることでしょう。でもその体験は、これから先の 時代を生き抜くのに必要不可欠になる でしょう。これからは答えのない時代が 待っています。ですから自分の考えを「壁打ち」して磨き上げていってください。
 私は海外の様々な大学と学生寮を見て回っていますが、特に寮にはいろいろな人がいます。育った背景が違えば、考えや常識も違います。日本で数少ない、多様性が担保されている場所が寮と言っても過言ではありません。例えれば毎日他流試合をしているようなものです。それもいろんな流派がいます。さらに親元を離れて生活のほとんどを自分でやりくりすることも、自立心のある大人になるのに大事な経験です。自分を磨ける環境に身を置いてみる、そんな経験も大事です。
「自分の人生の舵は自分が握っているんだ」。
そう胸を張って言えるような大人になってください。

日野田 直彦 (ひのだ・なおひこ)
1977年生まれ。帰国子女。帰国後、同志社国際中学・高校に入学し、当時の一般的な教育とは一線を画した教育を受ける。同志社大学卒業後、大手進学塾に入社。2008年奈良学園登美ヶ丘中学・高校の立ち上げに携わる。2014年大阪府の校長公募制度に応募、公立学校最年少(36歳)で府立箕面高等学校校長に就任。着任3年目には、海外トップ大学への進学者を含め、顕著な結果を出す。2018年より武蔵野大学中学校(現・武蔵野女子学院中学校・高等学校)の校長に着任。著書に『なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか!?』( 2018年/IBCパブリッシング)がある。

※この記事は、2019年7月発行『BASE』vol.4の記事を転載したものです。

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ライター
『BASE』編集部

"HAVE A BASE"をテーマに、学生寮・学生会館を運営する共立メンテナンスの特任チームが編集・発行する不定期フリーマガジンです。大学や専門学校への進学、留学、就職や起業など、これまでに経験したことのない世界に飛び込もうとする方に役立つヒントを詰め込んでいます。